月経前不快気分障害(PMDD)
PMDD:Premenstrual Dysphoric Disorder
DSM-5:抑うつ障害群
生殖年齢にある女性のほとんどは月経(生理)前に何らかの身体的変調や不快気分を経験する。これらの生理的変化の不調が、日常の生活に支障がでるほど深刻な場合にこれを「月経前症候群(PMS)」と呼ぶ。また、各症状が深刻であったり、中でも「感情・精神面の症状」が顕著なケースを「月経前不快気分障害(PMDD)」と呼ぶ。
PMDDは黄体期(排卵後の時期)の最終週において、抑うつ気分、不安感、情緒不安定さ、怒りっぽくなりそれが制御できない、といった「感情や衝動の著しい表出」が特徴となっており、それらが社会生活や人間関係の維持などに支障が出るような場合に治療の対象となる。感情・精神面の症状だけでなく乳房の張りや痛み、頭痛、筋肉関節痛、むくみなど、PMSに見られるような身体症状も併せて認められる。
PMS・PMDDの症状は月経前を目処にだいたい1週間程度続き、生理開始とともに症状は収束していく傾向があるが、「排卵の前後に短期間」「排卵直後から二週間程度」「排卵後から月経終了までずっと」症状が出る場合もある。排卵直後から症状が出る場合などではかなりの期間を心身に影響を受けていることになり、社会生活への影響も大きい。月経前症状には個人差が大きく、症状が深刻な場合でも放置されている事も多い。生理が終わってしまえば次の生理になるまで症状が一時的に無くなるため、我慢してやり過ごしてしまったり、PMS・PMDDの一般的な知名度の低さなども相まって他者に相談したり、適切な診断や治療に結びつかないことも多い。
PMS・PMDDの発症には黄体ホルモン(プロゲステロン)の血中濃度の低下が原因として挙げられている。また、人間関係のストレスや過労、睡眠不足、偏った食生活などによって慢性的なストレス状態が続くと症状が顕在化しやすい。症状が日常生活へ影響を及ぼし、それがさらなるストレス要因になって、症状を悪化させる悪循環を生むこともある。
PMSの治療には低用量ピルや漢方が用いられることが多い。また下腹部痛や腰痛、頭痛などの各症状に対しては抗炎症薬や鎮痛・解熱剤などが処方される。PMDDに関しては抗不安薬や抗うつ剤の処方といった薬物療法が用いられる。
身体の栄養バランスや生活リズムの偏りによって症状が悪影響を及ぼす事も多いので、カフェインやアルコールを控えたり食事やサプリメントで栄養バランスを整えるなどの生活改善によって症状を和らげることができる。
不摂生を控えたり、食生活を改善したり、PMS・PMDDの症状が出やすい時期を把握して無理な仕事を控えたり、ゆっくり休養を取ったり、「そういう時期だから」と自分や周囲を納得させたりと「生活や周囲の環境を整える」ことが重要となる。