双極性障害(躁うつ病)

Bipolar disorder
DSM-5:双極性障害および関連障害群

双極性障害とは「躁状態」と「うつ状態」を交互に繰り返す症状。「躁うつ病」とも呼ばれる。
「躁」状態とは「気分の高揚、万能感」を持つ状態を指し、「陽気でとにかく喋るのだが内容は支離滅裂、笑っていたと思ったら急に怒り出す」といった具合に、「憂うつ感」とは逆の症状。躁病の状態の時は「自分は何ら問題ない」と感じるが、やたらとおしゃべりで、他者の話題も顧みずひたすら話し続けたり、物事に集中できなかったり、ささいなことで怒りやすくなるなど、本人も予測できない気分変化が生じる。
表出する症状を見ると自殺念慮(死にたいと思ったり、自殺を実行する事)もある「うつ状態」の方が深刻なように見えるが、躁症状には「ギャンブルや過剰な消費活動」「暴力や問題行動を起こす」「治療の方針に納得しない」「処方された薬を飲まない」「通院を止めてしまう」といった行動に至ることがあり、社会生活や治療の際に様々な問題が生じる。
躁状態とうつ状態とを繰り返すものを「双極Ⅰ型障害」、軽躁とうつ状態を繰り返すものを「双極Ⅱ型障害」と分類している。
治療には薬物療法が用いられる。躁症状が穏やかなケースなどは表出する症状がうつ病と似通っているが双極性障害とうつ病では治療方法が違うため注意が必要となる。

双極Ⅰ型障害

一般的に言う「躁うつ病」の典型。また、うつ状態を伴わない「躁病」も双極Ⅰ型に含まれる。
躁状態を示すような性格的特徴としては「負けん気が強く、強気で、鼻っ柱の強さの陰に小心さが隠されており、積極的・活動的である。物事に熱中しやすく、一度やり始めるととことんまでやらないと気がすまない。常識的である反面、理想を追い求め、正義感が強く、潔癖で非常に気をつかい、几帳面」といった典型例が挙げられる。こうした性格的特徴が躁状態の「気分の高揚、万能感」によって加速されると自己中心的な反応や攻撃性を示す。本人に病識(自分が病気だという自覚)が無い事が多く、仕事や人間関係でのトラブルから精神科の受診に至る場合が多い。

双極Ⅱ型障害

躁状態が比較的軽度な症状。躁状態の持続期間はⅠ型よりも短いが逆にうつ状態が続く期間が長い。躁の状態が軽度であっても、うつ症状の期間が長期化・重症化しやすい。アルコール依存症や自殺のリスクはⅡ型の方が高く、「治療の難しさ」という意味ではⅡ型の方がより「重症」とも言える。

気分循環性障害

継続的に気分が不安定で、軽い抑うつや軽い躁の期間を何回も繰り返す症状。躁やうつの症状は双極性障害よりも軽度なのが特徴だが、気分の移り変わりの周期はより短い。慢性的に軽躁状態になるケースもある。
躁状態のときには仕事や生活が活気づいていて異変に気付きにくい事もあるが、「気まぐれ」「一貫性が無い、」「突拍子も無い行動に出る」などと躁病相の時に家族や仕事でのトラブルに見舞われる事も多い。
症状は長期に渡って続き、生涯治療を受ける事も多い。治療には薬物治療が用いられる他、家族療法や集団療法などを通じて「自分自身の状態に気づき、対処法を身につける」のを援助していく。