うつ病/大うつ病性障害

Major Depressive Disorder
DSM-5:抑うつ障害群

なんらかのストレス要因によって「気分が気落ちし、憂うつで悲しい」「落ち込んでいる」「怠い、やる気が無い」といった「憂うつ感」を感じる事は人間の心理的な反応としては自然な反応であるが、「憂うつ感」を強く感じたり、ストレス要因から離れても「憂うつな気分」を感じたりと、深刻な「憂うつ感」やそれに伴う身体症状が継続的に続く場合には「うつ病」の可能性がある。
うつ病の症状としては「集中力や注意力の減退:集中力が低下する、身体がだるい、何もやる気が出ない、体を使っていないのに疲れが続く、休む時間が増えだるさがぬけない、なにをしても楽しくない、決断力が低下する、憂うつな気分ばかり募る」「罪悪感や無価値観:自分が家族や職場に対して申し訳ない気持ちを持ったり、自分なんていない方が良いのではないか、いっそ消えてしまった方が良いのではないか、といった気持ちを持つ」「将来に対しての悲観的な見方」などがある。また食欲不振や、過食、睡眠困難や過眠といった、食欲や睡眠に関する障害も発生する。うつ病の症状が進むと、自信の喪失や焦りや不安をさらに強め「いなくなりたい」「死にたい」と思ったり、実際に自殺を試みる事もある。
うつ病の発症にはいくつかの原因が複合的に影響して発症すると考えられており「うつ病になりやすい遺伝的素因」や「ストレスを受けやすいまじめな性格」といった「生物学的要因」や「心理学的要因」が素地としてあり、それに「外的なストレス」などの「環境要因」が作用する形で発症が促される。
うつ病は、性格要因や、仕事や人間関係のプレッシャーやストレス、別離や疲労などの様々な要因による「過労状態」によって引き起こされる「精神的・肉体的な行動」に対するある種の「エネルギー枯渇状態」である、とも言える。よって、うつになった直接的なきっかけや原因が解決しても症状が直ちに回復するわけでは無い。
治療には薬物療法や認知療法、対人関係療法などが用いられるが、まず「十分な休養」が必要とされる。「十分な休養」をとるためには仕事や家事、人間関係といった「ストレス要因」から一定期間距離を置く必要がある。過剰な刺激から遠ざかり、乱れた食生活や、睡眠やリズム、生活習慣を適正化することによって心身の疲労を回復させる事ができる。
うつ病になる前段階においては休息能力を失ってしまうような事が多くあり、心身ともに疲れ切ってどうしようもなくなっているのにも関わらず「休むに休めない」状況に陥る事も多く、休職や自宅療養で改善が望めない場合には入院治療が有効となる。家族などの近しい間柄との人間関係でさえストレスになることも多いので、入院して一人になることによって、外界からの刺激を遠ざける必要がある。
こうした自宅療養や入院と平行して薬物治療などのそのほかの治療が行われる。
「うつは必ず治る」、「うつは風邪のようなもの」と表現されることもあるが、投薬が効果的でないケースやうつ病の再発率を鑑みると必ずしも適切な表現とは言い難い。